運動と乳癌リスク

新年明けましておめでとうございます。このブログを読んで頂いてありがとうございます。今年は元旦早々に能登半島で大地震があり、未だに完全復旧はしていません。また翌日の1月2日には羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故もあり、日本航空機は全焼しています。日本航空機の乗客の命がすべて助かったのは、不幸中の幸いでした。今年の残りの1年には悪いことが起こらないことを祈ります。

今月は、運動が乳癌リスクを減少させること についてお話しします。2023年12月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)の機関誌である、ジャーナルオブクリニカルオンコロジーと言う一流の医学雑誌に掲載がありました。閉経前の女性が運動することで、乳癌リスクを減らせるかどうかを19個の研究をまとめたものです。

今まで閉経後の女性は、運動することによって乳癌の発生率が下がることが証明されていますが、閉経前の女性に関してはこのことは明らかにはされていませんでした。今回の研究は、これまでに発表された北米10、ヨーロッパ6、アジア2、オーストラリア1の全部で19個の研究を統合して発表したものです。対象者の数は547,601人で、観察期間の中央値は11.5年と長期にわたるものでした。運動に関しては最も良く行った上位10%のグループと、最も少なかった下位10%のグループとを比較した研究です。運動に関しては個々の申告に基づくもので、特にどのくらいの距離を走ったとか特定の運動したかどうかに関しては記載されていませんでした。結果については、観察期間の中央値が11年5ヶ月の時点で10,231人の乳癌が診断されました。最も運動したグループの乳癌罹患率は最も運動が少なかったグループと比較して6%低かった結果が出ました。また、BMI(ボディマスインデックス:肥満度)で補正をすると10%の差がありました。運動強度に関して、中間の強度のグループでもその差は少ないのですが、運動をしたグループの乳癌罹患率は下がっており、その傾向は運動強度に比例していました。したがって、運動強度が強い女性ほど乳癌罹患リスクが少なくなっていました。乳癌のサブタイプ毎のリスクではHer-2陽性の乳癌は運動強度の強い人は43%リスクが低くなり、他のサブタイプではそれほどの差を認めませんでした。

運動することにより、閉経前の女性でも乳癌罹患リスクを減少させることができることが証明されました。差はおよそ10%程度ですが、健康管理の一つとして運動することをお勧めします。

大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 【認定資格】 大阪大学医学博士 日本外科学会認定医、専門医、指導医 日本乳癌学会専門医・指導医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構認定読影医 日本内分泌・甲状腺外科専門医