1か月でオミクロン株の急速な拡大

先月、2021年12月中旬に書いた院長ブログでは、日本での新型コロナウイルスの新規感染者は、当時1日あたり100名から200名と十分感染は落ち着いていました。海外でのオミクロン株の急激な感染拡大が伝えられていましたが、いまひとつ実感が出来ませんでした。

たった1か月で、新型コロナウイルスの感染状況は一転しました。2022年1月20日の時点で、昨日の新型コロナウイルスの新規感染者数は全国で34,000人を越え、東京7,377人、大阪6,101人といずれも過去最高の人数を記録しています。

感染症の専門家が、第6波は必ずやってくると言っていましたが、全くその通りになってしまいました。政府は水際対策を徹底するとのことで、入国時の抗原検査や一定期間の隔離等を徹底し、水際対策をオミクロン株の拡大防止の最大の防御と考えていました。

しかしながら、そこには大きな欠陥がありました。それは在日米軍の基地でした。米兵は本国米国から日本に来る際にはPCR検査等を受けずに入国し、日本でも隔離期間無しに基地周辺には外出が自由に出来る状態でした。米兵から基地周辺にオミクロン株の感染が拡大したことは、沖縄、岩国など基地周辺の地域からオミクロン株の感染が多発したことから明らかです。

米軍には日米地位協定により、米国と日本を自由に行き来ができ、米軍人は出入国管理法の適用から除外され、旅券や査証(ビザ)なしで日本に出入りできる。また、米軍が日本に持ち込む品に関税を課さないことや、米軍関係者による公務中の犯罪は米軍が裁判権をもつ等の、治外法権的な不平等な取り決めがあります。今回の感染拡大に関しては日本政府から米軍に出国時のPCR検査を行い、日本在留中の不要不急の外出制限が要請されました。しかしこれは感染がかなり拡大してからなので、時すでに遅しと感じます。

感染拡大に伴い、まず基地を有するか、基地に隣接する沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置を2022年1月9日から1月31日まで適応されました。また1月21日から上記に加えて首都圏の1都4県、中部の3県をふくむ1都15県に適応を拡大されます。

この第6波の拡大スピードは今まで経験したことが無い早さで、1週間で数倍から10倍の感染数拡大が生じています。ヨーロッパやアメリカでも拡大のスピードは非常に速かったので、オミクロン株の感染の特徴といえると思います。ただ感染力は強いのですが、感染は主に上気道に起こり、肺に感染が及ぶことが少ないために重症化はしにくいとされています。しかし、感染者が多くなると重症化はしにくいと言っても一定の基礎疾患のある人は重症化するので、感染対策は今まで通り必要です。

感染対策に決め手はワクチン接種ですが、オミクロン株ではブレイクスルー感染と呼ばれる、2回ワクチン接種をしていても感染するために、3回目の接種が有効とされています。政府は3回目の接種を前倒しにすることを発表していますが、ワクチンの配送がどのようになるか、詳細なスケジュールは決まっていません。当初のワクチン接種でも1日100万回と号令をかけ、医療機関にはっぱをかけたのですが、肝心のワクチンが配送されず、予約した患者さんにお断りをした医療機関はたくさんあったようです。

1月20日現在、当初オミクロン株の感染が始まった米国ニューヨーク州や南アフリカでは、患者さんが減少しています。感染の拡大は非常に早いのでしょうが、ピークに達すると減少に転じるのも早いのではと推測されています。早く新型コロナウイルスの感染が終息し、元の生活に1日も早く戻れることを祈っています。

大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 【認定資格】 大阪大学医学博士 日本外科学会認定医、専門医、指導医 日本乳癌学会専門医・指導医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構認定読影医 日本内分泌・甲状腺外科専門医