3年目に入った新型コロナウイルスの感染

2020年1月に中国 武漢から新型コロナウイルスの感染が日本に入り込み、早いもので丸3年になります。PCR検査の拡充やワクチン接種が進んでいますが、いまだに感染の勢いは衰えていません。当院でもこの間に院内で新型コロナウイルスのPCR検査ができる体制になっています。2023年1月20日現在、少し減少には転じていますが、第8波の真っ只中にいるような状態です。1月19日には新規感染者数は1日96,000人で、1日の死亡者数は450人もいます。100年前にスペインかぜが世界中に感染拡大しましたが、約3年経過して収束したと報道されています。約100年前にはワクチン接種もしていないですし、PCR検査も無かった時代ですが、おそらく集団免疫を獲得して収束に立ったものだと思っています。

現在の感染の主流はオミクロン株で重症化することは少なく、感染しても肺炎には至らず、上気道の感染症状のみで済むことが多いので、政府は感染拡大しても緊急事態宣言を出すようなことは無くなりました。緊急事態宣言を行うと経済を止めることになり、市民生活にも多大な影響を与えます。いまは新型コロナウイルスと共存するウィズコロナの時代になりました。

2023年1月20日、新型コロナの感染症法上の位置づけについて、岸田総理大臣は原則として今年の5月くらいに、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示しました。2022年3月のブログにも書きましたが、現在の分類では新型コロナウイルスは「2類」に入っています。感染症には感染性の重篤な病気から軽い病気まで、1類から5類、5種類の分類があります。1類には、エボラ出血熱のようにきわめて致死率の高い伝染病が含まれています。現在「2類相当」の新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、入院勧告などが必要ない「5類」(季節性インフルエンザなど)に引き下げる事を検討する事です。1類から4類までは保健所に届ける義務がありますので、引き下げた場合には保健所や医療機関の負担は減るが、PCR検査や治療費の一部が自己負担になる可能性が高く、受診控えで感染者が増えるリスクがあります。「5類」への移行により、一般の医療機関でも患者の受け入れが可能になり、感染者や濃厚接触者の待機などの行動制限もなくなることから、政府は、医療提供体制や医療費の公費負担のあり方も議論の対象になっています。これらの折衷案として、5類には入れるが検査費用や治療費を公費負担にすれば、良いとこ取りで医療機関、保健所の負担も減り、受診者の負担も今まで通りで、社会経済活動も継続しやすい利点があります。

新型コロナウイルスの感染により経済は停滞し、休業を余儀なくされた飲食店が多数あり、経済活動に対しては多大な負の側面を持っていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、会議がネット上で可能になり、その場所に行かなくても良くなったことは一つのメリットだと思います。また私たち乳腺外科の領域では、オンライン診療を行う事は困難ですが、在宅勤務もたくさんの人ができるようになりました。当院でも週に2回、手術前と手術後の患者さんについてのカンファレンスを行っています。このカンファレンスも学園前や梅田イーマに勤務する医師に対しては WEB で行っています。以前にはこの様な会議は簡単にはできなかったのですが、コロナの時代になりこの様な会議が可能になりました。これはコロナがもたらした、良い側面もあると考えられます。

大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 【認定資格】 大阪大学医学博士 日本外科学会認定医、専門医、指導医 日本乳癌学会専門医・指導医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構認定読影医 日本内分泌・甲状腺外科専門医