新型コロナウイルス第5波とワクチン接種

新型コロナウイルスの感染拡大が爆発的に起こっています。第5波と呼ばれる波が今までの感染拡大の中で最も大きく、最も顕著な感染となっています。この感染の原因はインド型の変異株と呼ばれる、デルタ株の感染拡大によるものです。ほぼ毎日のように新規感染者数が過去最高と呼ばれ、8月20日現在、日本全体では毎日約2万5千人を越える新規感染者が認められています。東京では約5,000人を超え、大阪府下でも毎日2,000人を超える新規感染者が出ています。デルタ株の特徴は感染力が強いことと、感染するとウイルスの排出量が非常に多いと言われています。したがって今までの対応では、感染が生じなかったところでも感染拡大が起こっています。例えば、デパートの地下の食料品売り場では、クラスターと呼ばれる感染拡大が起こっています。当初保健所の調査が入る前には、おそらく休憩室等で感染が拡大したものと考えられていました。しかし保健所が調査を進めると職員の休憩室は、例えば昼食を取る時には監視する人がいて、決してしゃべったりすることはできないそうです。お客さんもマスクを着け、従業員もマスクをしていても、デルタ株では感染を引き起こすことがあります。従ってこれまで以上に、新型コロナウイルスの感染には十分な注意が必要です。

今回の感染拡大で最も重要なことは、感染拡大が医療崩壊を引き起こしているという事実です。大阪府下でも、21年4月の第4波の際にはなかなか入院ができずかなり病状が悪化してからの入院となり、その後死亡された方や自宅療養中に死亡された例がありました。現在東京でも、自宅療養中に悪化しても入院できず、死亡したりする例がニュースになっています。このような状況になれば急病になったり、大きな事故にあったりしても、救急病院でなかなか引き受けてもらえなくなっています。また、大病院では緊急性のない手術が延期されたりすることも実際起こっているようであります。これは第1回目の緊急事態宣言の際にも、整形外科等の急がない病気であれば手術が延期された事例がありました。今回の感染拡大に対しても同様のことが生じているようです。

日本でも、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進んで来ました。8月20日現在、2回目のワクチン接種を受けた人は日本全体で5000万人を越えました。これは国民全体の約40%に当たります。ワクチン接種に伴い、発熱、倦怠感、接種部位の痛み等いろんな副反応が出ることは、皆さんご存知だと思います。あまり知られていない副反応で、接種した腕のワキのリンパ節が腫れる副反応があります。ワクチン接種が始まった当初、当院で手術を受けられた患者さんで手術の際に、センチネルリンパ節生検(リンパ節転移が最初に起こるリンパ節)の検査をした時、リンパ節が大きく腫れていて転移を疑うリンパ節がありました。顕微鏡で検査をしても転移は無く、手術後に患者さんがワクチン接種を受けたために、リンパ節が腫れていたことがわかりました。また最近、日本乳癌検診学会より検診に当たっての注意として新型コロナワクチン接種に伴う反応性リンパ節の腫大(腫れて大きくなること)についての記載があります。新型コロナウイルスワクチン接種に伴うリンパ節腫大、特にワキのリンパ腺腫大はワクチン接種後によく見られる臨床症状/所見で最長ワクチン接種後10週間後くらいまで持続します。ワクチン接種後早くて1~2日でワクチン接種を受けた側のリンパ節腫大が発症しますが、ワクチン接種後の反応性リンパ節腫大は良好な免疫反応を獲得している兆候といえます。ワクチン接種に伴うリンパ節腫大は反応性リンパ腺腫大の典型な画像を呈することが多いため、超音波では比較的容易に判定ができます。従って問診でワクチン接種を受けていたら、左右どちらの上腕に受けたかを問診することも必要だと考えます。

大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 【認定資格】 大阪大学医学博士 日本外科学会認定医、専門医、指導医 日本乳癌学会専門医・指導医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構認定読影医 日本内分泌・甲状腺外科専門医